必ずしも、治療と仕事を両立しないといけないわけではありません。
受ける治療の種類、がんのステージ、体調、仕事を続ける意思、仕事内容、様々な条件で仕事と両立できるかどうか、両立するにしても、どのように両立できるかは人それぞれ違います。
もちろん、治療期間を休職するという選択をしてもいいのです
仕事とがん治療の両立を支援する立場の私が、がん患者になってわかったこと
産業保健師として、がん治療を受ける働く人の支援をする立場の私自身が乳がんになり、そして、仕事をどうするか、治療と両立したいか、当事者になって感じたことは支援者の立場ではわかりえないことばかりでした。
がんになったら、もう仕事はできないかもしれない、辞めないといけないのかもしれない。多くの不安が沸いてきました。
支援者の立場を経験していたとしても、こうした不安を感じていたのですから、知らない人にとってはもっと大きな不安がよぎることは自然なことだと思います。
がんになったからといって、すぐに仕事を辞める決断はしなくていいし、診断や治療方針が決まるまで、そして実際に治療が開始されないと、仕事ができるかどうかも、わかりえないことです。
私は、右乳房の全摘出手術、その後の半年間の抗がん剤治療(合計8クール)を受けました。
手術後1年以上、右胸の傷が痛くて体を折り曲げて歩いていましたし、抗がん剤では吐き気や手足のしびれがありました。
吐き気で集中力が落ちていたし、手のしびれでペンで文字を書くのも辛かった。
抗がん剤では、投与から1週間後あたりから体の免疫を司る白血球が減少し、感染しやすくなり貧血にもなります。
その時期に、多くの人と関わる仕事をするだけでも感染のリスクは高くなりますし、発熱する時もあります。
しかも、抗がん剤の投与の回数が増すたび、私の場合は副作用の程度も重くなっていき、完全に体力が戻るまで2年かかりました。
ただ、職場の理解があったことと、非常勤であったことからかなり融通を利かせた配慮をしてもらえたから仕事を続けることができました。
人によって事情は様々ですが、可能な限り余裕を持っておくことと、無理をせず休めるなら休むという選択も必要です。
日本人の3人に1人は生涯の内、一度はがんになる時代
厚生労働省が唱えている「仕事とがん治療の両立支援」
減少する労働人口の確保や、人生100年時代に向けて就労機会を維持するためなどの目的はあるが、仕事と両立したいのか、したくないのかは選べる自由がある。
また、治療を始めてみないとわからないこともある。
治療に入る前からきっちりと決めておくのではなく、様子を見ながら臨機応変に変化できるよう余裕を持たせておく。
もちろん、自分1人で決められることではなく、会社側との話し合いが必要なことでもあります。
自分の素直な気持ちを伝えつつ、どんな方法があるか会社側と相談をしておくことが大切です。
厚労省 仕事とがん治療の両立