在るのに無かったことにする

本当は言いたかったのに、言えないとか、やりたいことなのにできない。

自分のなかに湧き出てくるものが在るのに、状況や周りの人のことを考えて無かったことにすることは誰でもあると思います。

心理学の用語では「未完了の感情」といいます。

内側から沸いてきたものは、外側へ表出される必要があり、表出すると完了します。

言いたいことが言えたらスッキリするのは、未完了だったものが完了するから。

外側に表出されることなく、無かったことにされたものが蓄積・堆積してくると、周囲の人間関係や自分を取り巻く状況、病気などに姿形を変えて表れてくることがあります。

「無かったこと」にされているものが、自分の存在に気づいてほしくて、まったく違う形となって自分にサインを送ってくるようなもの。

7年前に私は乳がんになりましたが、がん細胞も、もとは自分の体の細胞が変化したもの。

がん細胞は自分以外の外側からやってきたものではなくて、もともと自分の内側にあったもの。

なんのために、乳房のシコリとなって表れてきたのか、自分の内側を見つめてみて浮かんだ言葉は「気づいてほしい」でした。

「在ることに気づいてほしい」

がん細胞からの切なる願いが聞こえてくるようでした。

実際に、乳がん発覚から私の人生は大きく変化しました。

受動的から主体的に、そして被害者意識から当事者意識へ。

周囲の状況は変わらないのに、自分が変わるだけで見える景色が180度変わりました。

とはいえ、すべて自分の内側に在るものを外側へ出すのは難しいのが世の常。

外側への適切な出し方が見つからないときは、まず自分自身が「在るな」と認めてあげることから。

「私の中にはこんな思いが在る、願いが在るのだな」

在るものを無かったことにしないまず一歩は、認めることからはじまる。