飲み込んだものを吐き出す

ゲシュタルト療法では、人の心と行動の不自由さを接触境界(コンタクトバウンダリー)の機能不全であると考えている。

コンタクトバウンダリーとは「私」と「私以外のもの」を隔てる境界。

この目には見えない境界線、他人に侵入されたり、もしくは他人に入り込みすぎることで何等かの生きづらさを感じるようになる。

コンタクトバウンダリーには4つの類型があり、その内の一つに

「鵜呑み」がある

飲み込んでみないと、わからないことがある

人は生まれてから、多くは両親、または養育者から言われたこと、世間の常識、他人の意見を自分で吟味することなく「鵜呑み」して成長する。

鵜呑みしたことが、自分に合っているのかは、使ってみないとわからない。

成長して、学校や職場などの人間関係で何かうまくいかない感じ、生きづらいと感じるときにはじめて「鵜呑み」したことが自分に合っていないことに気づいたりする

ある銀行員の話

私が銀行員の健康相談業務をしていた時の話。

入社2年目の人だった。

その人曰く「親や親せきが銀行に勤めたほうがいいというから今の銀行に入社した。でも、実際に働いてみたら全然楽しくないし、良いとも思えない」と話した。

社会に出て働いたことがないので、周囲の人の意見をそのまま「鵜呑み」にして働いてみたら自分には合っていないことがわかったというのだ。

「鵜呑み」が悪いのではなくて、実際に自分で試してみないとわからないことが沢山ある。

やってみて損をしたということもなく、「これは自分に合っていないのだな」とわかっただけでも、それは試した価値がある。

今、世界中が飲み込んだものを吐き出す時

コロナ禍で世界中の価値観が変化してきた。

これまで当たり前であったことが、当たり前ではなくなり、まったく違った価値観も生まれている。

以前の価値観が悪いのではなくて、それを今一度見直し、再構築する時代になった。

それは、飲み込んだものを一度吐き出し、これからも使うか、もしくは捨てるか、適宜使い分けるかを選別すること。

自分が「生きづらい」「しんどい」と思ったときは、どんな言葉、価値観を「鵜呑み」しているか取り出して見てみると、何かの糸口が見えてくるかもしれない。